モラ自身の言葉を借りるならば、本作は「アメリカ大陸におけるアフリカの遺産の存在を明らかにする」ことを意図していたのだという。そんなコンセプトを象徴するオープナー「AfraJum」は本作屈指のスピリチュアル・チューンだろう。何世紀にもわたり南北アメリカで繁栄してきた即興、リズム、ジャズの幅広いスペクトルを受け入れつつも統合。ハイチ、アフリカ、ネイティブ・アメリカンのモチーフに基づいたメロディーを展開し、アフロキューバにインスパイアされたパーカッションを背景に、デトロイトのベテランであり象徴ともいえるケニー・コックスとロドニー・ウィテカーの卓越した演奏が躍動する、あまりにも素晴らしい一曲である。それ以外にも、アフロキューバンのリズムにフルートやスティールパンなどがカラフルに絡み合う「Rumba Morena」、ケニー・コックスのソロも実に素晴らしい「Five AM」、アイアート・モレイラあたりを思わせるサンバジャズ「Samba de Amor」、スピリチュアルなソプラノサックスに心打たれる「Cultural Warrior」、カーニバルの祝祭を思わせるエピローグ「Conga Hasta La Vista」に至るまで、一切捨て曲なし。